石谷貴之さん コーヒーコラム

石谷 貴之
エバシス ジャパン・ブランドアンバサダー
石谷 貴之
Taka Ishitani

2012年より独立しフリーランスで活動開始。2017年ジャパンバリスタチャンピオンシップ優勝。
2009年、2012年、2015年準優勝。Coffee Fest Latte Art世界選手権 審査員。
バリスタのトレーニングからスタッフ育成、店舗の立ち上げやオペレーションなど、幅広いコーヒーのコンサルティングを行っている。

石谷さんインタビュー
ワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC)2019 現地レポート!
バリスタ最高峰の競技会、「ワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC)2019」が、2019年4月11日~4月14日に、アメリカ・ボストンで開催されました。昨年度の同大会「WBC 2018」に日本代表として参加された石谷さんが、今回の大会現場を見学した際に実際に見て感じたことや、注目ポイントなどをレポートしてくださいました!

今回は、SCAA(SCAJのアメリカ版)という展示会の中でWBCが開催されていたんですよね?

はい。例年、だいたいこの展示会で新商品が発表されるんですけど、今年は新しいマシンの発表というよりは、今までの機能がより使いやすくなっているなどソフト面のアップデートが多かった印象を受けました。ロースターさんの出展も目立ちましたが、マシンは業務用大型マシンから小型のものまで展示していたり、あとは小型の焙煎機を出しているブースも意外に多かったですね。

僕がアンバサダーを務める「エバシス」のブースも、コンパクトながらも色々な角度からブースが見えるような工夫もされていて、かなり盛り上がっていました!スペシャルティコーヒーは浅煎りではなく深煎りの豆を使っていたのが印象的でしたね。ブースが賑わいすぎていて、残念ながら実際に飲むことはできなかったんですが(笑)

石谷さんがアンバサダーを務めるエバシスのブース風景

今回のWBCで「ここに注目していた」というポイントはありましたか?

ここ最近、こういった大会だと「生産処理方法に特徴のあるコーヒー」を使っているバリスタが上位にランクインする傾向があるんですね。それまでは「ナチュラル」や「ウォッシュド」など一般的な工程をたどったものが主流だったんですけど、昨年(2018年)からはワインと同じ発酵過程である「カーボニックマセレーション」や「アナエロビックファーメンテーション」などの専門的な生産処理方法で作られているコーヒーがトレンドとなっていて、それが今年もどれぐらい評価されるのかな、という部分には注目していました。

それから、バリスタは自分が持ってきたコーヒーをプレゼンテーションしないといけないので、例えばどういった場所でコーヒーが育てられ、何日間乾燥させ、それをどういう風に使いたいかなど、かなりしっかりとコーヒーの情報を取らないとWBCでは戦えないんですよね。SNSの発達などで生産者とも簡単にコンタクトがとれる時代だし、こういった新しい取り組みをしているという発信も僕たちがしていかなくてはいけないので、情報はかなり取らないと難しい時代になってきているなと思います。そういった点も踏まえ、この方はどういう取り組みをしているバリスタなのかな、というのは常に考えながら見ていましたね。

あとは、去年のWBCで一緒に戦った仲間が今年も出ていると、やっぱり「がんばってほしいな」という気持ちになりました。

 

昨年度日本代表として同大会に出場された石谷さんならではの視点で観戦

目新しさやトレンドといった点ではいかがでしたか?

そうですね、何年か前だと「あの道具はなんだろう?」とかあったんですけど(笑)、ツール系もある程度もう出尽くしてきている感じはありますね。それよりかは、さきほどお話した新しい生産処理方法とか、コーヒーそのものの品質という方に、完全にフォーカスが行っているなという印象でした。

実際、決勝に進んだ6名は全員が新しい生産処理方法のコーヒーを使っていたので、今年もやっぱりそういうコーヒーが評価されたのかなと。わかりやすい味が出るんですよね。実際に僕も豆をもらって飲んだんですけど、フルーツのような味というか甘さがあって、でもちゃんと濃度はあるし香りも特徴的という、すごくおいしいコーヒーでした。

ちなみに産地で言うと、1位と3位、2位と4位の方がそれぞれ同じ農園のコーヒーを使っていました。品種は違っていたりするんですけど、やはりいいものを作っている生産者のコーヒーはみんな使いたいと思うし、ここで評価されることで翌年の値段が決まったりするので農園にとっても非常に大きな意味があるんですよね。有名になった農園が、すぐに家が買えてしまうなんてこともあったりして(笑) 結果的にコーヒーの品質がどんどん上がってきているので、すごくいいことだなと思います。

新しい生産処理方法のコーヒーが最近のトレンド

大会はどのようなスケジュールで行われるのでしょうか?

例年60か国ぐらいから参加者がいるんですが、まずは予選を2日間に分けて行います。そこから16人が準決勝に進み、さらにその中から6人が決勝に進みます。全部で3回、いいパフォーマンスをしないと優勝できないということになるので、結構体力は使います(笑)

ただ決勝まで行くと、例年そうなんですけど、そこまで行ったらそのときの運やめぐりあわせみたいなものもあるので、逆にプレッシャーを感じず、決勝がみんな一番リラックスして自由に楽しくやっているな、という印象がありますね。

今回のチャンピオン(韓国代表:Joo Yeonさん)のすごかったところは?

今回優勝したJoo Yeonさんとはもともと交流があって、去年の11月に一緒に韓国でセミナーをやったりもしていたんですね。彼女は「Momos Coffee」というカフェの従業員で、コーヒーの成分分析や研究もすごくされていましたし、そういう方が優勝したというのはすごくよかったなと思いました。

もちろん、いいコーヒーを使っていたというのはあるんですが、プレゼンテーションが本当にすばらしかったですね。科学的な分析がしっかりできている一方で、コーヒーをより身近に感じられるような切り口や、対お客様へのホスピタリティーという両方の要素をうまく融合させていた印象です。たいていどちらかの要素に偏ってしまうんですが、彼女の場合はどちらも15分間というプレゼン時間の中にしっかり入っていたので、とてもよかったですね。

韓国は今すごくコーヒーが盛り上がっているんですよね。コーヒーの消費量もすごく増えていますし、今回も韓国のメディアがたくさん入っていたりとにかく国全体が盛り上がっていて、そういうのもいいパワーになっているのかなと感じました。

会場全体の熱気も、挑戦者を後押しするパワーになる

バリスタの皆さんにとってWBCに参加すること自体すごいことですが、そこでの優勝とはどんな意味があるのでしょうか?

WBCは規模的にも一番大きい大会ですし、最先端のことをやっているので、そこでチャンピオンになれたらやっぱり人生変わるのかなっていうのはありますね。世界が広がるというか、生産国へのアクセスという点でもそうですが、世界的にいろいろなことを発信できる立場になるので、やはりバリスタにとっては大きな目標ですよね。

WBCは2001年に始まった大会ですが、年々ルールも見直されてブラッシュアップされてきている印象です。いろいろな時代背景もあったりして、2010年ぐらいからはより「コーヒー豆」というところにフォーカスされる傾向になってきていますね。だから、生産者も試行錯誤してよりいいものを作るようになり、焙煎の技術も上がってきて、抽出もより科学的に検証されて安定的になってきたりと、レベルはどんどん上がってきていますね。一方で、そのように考えなくてはいけない要素が増えてきているので、競技をする立場としては難しい時代になってきているなというのはありますね。

来年20周年を迎えるWBCは、バリスタにとって大きな目標のひとつ

石谷さんご自身の今後のチャレンジについてはいかがでしょうか?

今回現地に行っていろいろ見てから決めようと思っていたんですが、結論、もう一度チャレンジすることに決めました!現地に行くと去年一緒に戦ったメンバーや知り合った方が会場にたくさんいて、みんなが口々に「来年はどうするんだ?」と聞いてくれるのがうれしくて、これはやっぱり出ないとダメだし、出たいなと思いました。そういう人とのつながりが持てるのがこういう大会のいいところだし、かけがえない大きな収穫です。

チャレンジするからには、世界大会はもう1回出たいですね!今回、知っている人が優勝したというのも大きいかもしれませんが、すごいなと思う反面くやしいなと思う点もあって、そういったことも次へのモチベーションにつながりました。なので、今回の大会もやっぱり現地に行って良かったなと思いましたね。

色々な情報があふれて簡単に入手できる時代だからこそ、自分の目で見て感じることが大事だなと思います。人から聞く情報も持っていた方がいいですが、やっぱり自分で実際に見たものには適わない。なので、これからチャレンジする若い世代の方にも、ぜひ自分の足で稼いでほしいなというのは、ひとつ言えることかもしれません。

昨年度WBC 2018オランダ大会で一緒に戦ったタイの選手チームとも再会!

 

今後バリスタを目指す若者は増えそうでしょうか?

そうですね。需要はあると思うんですが、日本の大会を見ていても残るメンバーは一緒だったりと、なかなか新しい人材が育つのが難しいのかなと。僕自身も「人手不足でバリスタの育成ができない」とか「お店のスタッフが何人もいるので、安定した味を出すのが難しい」という相談をよく受けます。極端な話、あるお店で飲んだコーヒーがたまたまおいしくなかったら、もうそこでは飲みたくないとなってしまうんですよね。

例えばエバシスのような全自動マシンだと、安定性や味の均一性というところが大きなメリットになるし、平均点を上げるじゃないですけど「常に平均点以下のものを出さない」ことが可能になるので、今後はそういった取り組みが必要だなと感じています。

バリスタを目指す若者が増えてきても、コーヒー業界全体の底上げという意味ではまだまだ改善の余地はあると思います。もちろん自分たちの手でバリスタを育成していくことも必要ですが、コーヒーのクオリティーを上げていくことがとても大事で、そうなるとどのコーヒーマシンを使うかというところが重要になってきます。そういった2方向から底上げができていけば、マシンとバリスタがうまく共存できるのではないかなと思います!

エバシスがどのようにコーヒー業界の底上げに貢献できるかにも期待!

エバシスがどのようにコーヒー業界の底上げに貢献できるかにも期待!